若い女の子たちに言いたくないこと

友人は優秀なSEでした。

31才までIT企業でバリバリ活躍し、結婚。

数カ月に妊娠するものの、それがきっかけで少々難しい病気が見つかり、母子無事に出産するためには安静にする必要があったため、やむなく退職。

そして出産。

もともとはスポーツ好きの健康体だったから体力もみるみる回復し、もともと好奇心旺盛な凝り性だったから、育児にドはまりした。こんなに面白くて目が離せない興味の対象はない!と目を輝かせていたのは、実に理系女子っぽかった。

 

3年ほどたっぷりと子育てを楽しみ、さてそろそろ社会に復帰しようと考えた。

子どもが小さいうちに稼いでおきたいし、地方都市なので保育所はまぁなんとかなる。どちらの実家も同じ市内だから、万が一のときには助けも期待できる。

そして、どうなったか。

 

IT企業は山のようにあるけれど、ハードワークが期待されるSE職、子育てしながら勤務したいママなんてお呼びじゃない。

正社員がダメなら派遣でもと探したが、そんな条件のいい職は派遣でも取り合いになる。残業をなるべく避けたいママには狭き門だ。

自分の経験とスキルなら、引く手あまたとは言わないけれど断られることはなかっただろうと、それだけの自信はあったのに、あまりの苦戦ぶりにショックを受けたという。あれは”独身ステータス”だったからかと。

弱気になって「とりあえずどこでも働けるところなら・・・」と近所の歯科医院の受付アルバイトに応募するものの、それもママたちの倍率高い争いとなり、あっさり敗れ去る。

「女が働くのって、難しかったんだね」と彼女は私に語りました。

 

優秀で働く能力も体力もあるのに、妊娠・出産・子育ての”関”を越えるとその能力を社会で発揮させてもらえないのは、どうしてなんだろう?

それは多くの女性が通る道なのに?

 

あんなに優秀なSEだった友人が、近所のバイトの面接に落ちて肩を落としているところなんて、私は見たくなかったです。

 

これから社会に出る若い女の子たちに、私たちはこう言わなければいけないのでしょうか。

大企業に行きなさい、そしてしがみつきなさい。大企業で働いているうちは産休育休で子どもを産んでもまた仕事に復帰できる。

スケジュールを立てなさい。子どもを産んでもたった1年で会社に戻ってこないといけないから。

そして体力をつけなさい。子育てと仕事の両立はハンパなく大変なのです。

 

こんな話は、女性と政治家だけが考えないといけないのでしょうか。

女性だけが、最初の就職時点で人生のキャリアプランを綿密に逆算し、そのとおりに粛々と人生を実行していかなければならないのでしょうか。

 

急な病気や怪我や、親の介護や配偶者の不幸なんて人生の”関”は男にだって起こりうることで、そこでキャリアを止めたり、変えたりすることは、誰にだってある話です。

 

24時間40年間戦い続けられる人しか、自分らしく働いていけない社会は、辛いと思うのです。

 

 

かくして、その友人はその後どうしたか。

彼女の姉が手先が器用で子供服やアクセサリーを作るのが上手かったので、彼女がネットショップを立ち上げて、結構繁盛しているようです。